妊娠、分娩に伴う異常を解説するコーナーです。
もともと看護職むけに書いたマニュアル(周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理→楽天ブックスで購入:中井章人著. 東京医学社、2008.11)をモディファイしたもので、読みづらい点が多いかも知れませんが参考にして下さい。
疾患毎にリスクサイン(自覚症状)を3段階にわけ解説しています。リスク1は経過観察可能な状態、リスク2は専門医の受診が必要になる状態、リスク3は生命の危険があり緊急を要する状態を示しています。詳細は各項目を御覧下さい。
本文中でしばしば用いられる「根拠に基づく医療」(EBM:Evidence-Based Medicine)について若干解説します。近年、多くの医療現場、医学教育、あるいはヘルスプロモーションの現場で、EBMが注目され、その概念が取り入れられ試行錯誤がくり返されています。
では、正確な科学データに基づく医療とは一体何でしょう。一つ例をあげて説明します。例えば、あなたの大切な人が高熱にうなされているとします。あなたならどうしますか?良く考えてみて下さい。温かいふとんを用意し、水分を補給し、栄養価が高く消化の良いものを食べさせ、氷枕でも用意するでしょうか。きっと私ならそうしてもらいたいと思うのですが、どうでしょう。温かいふとんにくるまって、一晩ぐっすり休めば良くなる、そんな気がしてきます。
では、この状態をEBMに基づき検証してみます。仮に原因不明の高熱だとすれば、一番必要な治療はクーリングということになります。水分や栄養補給は有効な手段と思われますが、ふとんによる保温は逆効果です。また、アイシングを行なう場合、氷枕だけではとても十分とは言えず、眼窩、頚部、脇の下、ソケイ部など血流の多い部分で集中的に行なう必要があるでしょう。いっそのこと、氷が浮いた水風呂に入る方が手っ取り早そうです。
はたして、これであなたの大切な人は良くなるでしょうか。いえ、良くなっていく気がするでしょうか。医療は人に対して行なわれるものです。病気(この場合は高熱)だけに目を奪われて治療や看護、あるいは保健指導を行ない、病人の信頼を失っては元も子もありません。全ての医療行為は病気に対し行なわれるのではなく、病人に対して行なわれ、それを支えるものこそがEBMなのです。つまり、真のEBMとは「科学的な事実(エビデンス)」と「患者の希望」と「医療従事者の経験」が一致した部分にあるわけです。
本文では最新のEBMを紹介し、これらをいかに周産期医療に役立てるか解説しています。医療従事者向けのマニュアルからの抜粋で、読みづらい点も多いと思いますが、病気の理解を深め、自己管理にあたっていただけることを希望いたします。
文責:日本医科大学産婦人科
中井章人
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