腹腔妊娠
受精卵が腹腔内(腹膜、大網、腸管など)に着床する妊娠で、全子宮外妊娠の0.5〜1%程度とまれな疾患である。大部分は胎児死亡にいたる。まれに生児を得ることがあるが、多くは胎勢(胎児の姿勢)の異常から先天奇形をもつ。
胎盤が完成した後(妊娠4〜5ヶ月)に診断された場合、しばしば根治手術が困難になる。胎児、臍帯を除去した後、胎盤が付着している臓器から剥離できない場合は、臓器(大網、腸管など)ごと切除するか、胎盤を残し閉腹し、メトトレキサートによる保存治療を追加しなければならない。
卵巣妊娠
受精卵が卵巣組織内に着床し、発育するものをいう。症状、経過は卵管妊娠に類似しており、同様に診断、治療する。
頸管妊娠
受精卵が子宮頸管部に着床したもので、子宮内の異所性妊娠である。頸管部は子宮体部と異なり、妊娠の進行に伴い増大せず胎児を育てることができない。また、頸管には子宮動脈が直接流入しており、流産徴候が出現すると予期せぬ大量出血に遭遇する。難治性で、ときに妊孕性の温存が難しい重篤な疾患である。卵管の通過性に問題はないが、着床が妨げられる炎症、萎縮、発育不全、頻回の人工妊娠中絶などの子宮内膜異常が原因と考えられる。
- 症状
- 無症候性性器出血
妊娠初期から少量の性器出血が断続するが、突然の大量出血をもって始まることもある。内診、ゾンデ診、子宮頸管拡張時に大量出血をきたす。
- 下腹部不快感、排尿痛、頻尿、腰痛
- 診断
- 内診
子宮頸管が柔らかく膨隆し、その上に比較的硬い体部を触れるため、子宮は全体として「だるま型」となる。
- 超音波
子宮頸管部に胎嚢を確認する。進行流産の場合でも頸管部に胎嚢が落下し、同様の所見を示すことがあるが、この場合は子宮内膜も胎嚢とともに下降している(剥離徴候)ことが鑑別点になる。
- 治療
- 子宮頸管内容除去術
大量出血の危険があり、ごく早期の症例に限られる。
- 子宮単純全摘術
最も安全かつ一般的だが、妊孕性は失われる。
- 化学療法併用療法
メトトレキサートにより絨毛組織の縮小をはかり、子宮頸管内容除去術を行なう。