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>TOP>情報コーナー「周産期看護マニュアル」top>偶発合併症>内分泌・代謝疾患

book「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
(中井章人著,東京医学社)より  (全体の目次はこちら)


I.異常・疾病からみたリスクサイン

◇
 4.偶発合併症のリスクサインと対応(一覧はこちら)

note概要

糖尿病

  1. すでに糖尿病を発症している女性が妊娠した場合は糖尿病合併妊娠、妊娠後にはじめて耐糖能異常が発症するか、発見されたものを妊娠糖尿病という。
  2. 妊娠により糖尿病は悪化し、失明や腎透析に陥ることがある。
  3. 胎児奇形、流早産、妊娠高血圧症候群、羊水過多症、巨大児、低出生体重児、新生児低血糖のリスクになる。
  4. 妊娠中、空腹時血糖100 mg/dl以下、食後2時間値120 mg/dl以下、ヘモグロビンA19%以下、ヘモグロビンモグロビンA1C5.5%以下にコントロールする。

甲状腺疾患

  1. 甲状腺疾患は生殖可能年齢にある女性に好発する。
  2. 流早産、妊娠高血圧症候群、子宮内胎児発育不全、胎盤機能不全のリスクが高く、周産期死亡率が高い。
  3. 甲状腺機能亢進症の場合、胎盤通過性と母乳移行が少ないプロピルチオウラシル(チウラジール(R))がすすめられる。

noteリスクサイン

糖尿病
 リスク1:糖尿病の家族歴.
 リスク2:口渇.多尿.多飲.
 リスク3:視力低下.昏睡.

甲状腺機能亢進症
 リスク1:食欲亢進.倦怠感.
 リスク2:頻脈.発汗.眼球突出.
 リスク3:脈圧上昇.うっ血性心不全.

noteリスクサインへの対応

  1. 糖尿病
    1. 糖尿病合併妊娠で最も懸念されるのは妊娠初期の胎児奇形の発生である。コントロールの悪い糖尿病(とくにヘモグロビンA1C6%以上の場合)では、妊娠成立後に十分な血糖コントロールを行なったとしてもこのリスクを軽減することはできない。したがって、妊娠成立前に適切な治療を受けておくことが極めて重要である。
    2. 妊娠中の血糖値は正常な胎児発育を維持するため、非妊娠時より厳密に管理しなければならない。実際、胎盤ホルモンのインスリン拮抗作用により、インスリン必要量は増加し、病態が悪化しなくてもインスリンを増量しなければならないことが多い。したがって、長い既往歴があり自己管理に問題がない場合でも、妊娠中は新たな気持ちで血糖コントロールを行なうようにする。
    3. 分娩時期は妊娠38週以降が望ましい。これは肺成熟はじめ胎児の未熟性に考慮したもので、アメリカ産婦人科医会では37週であっても誘発分娩や選択的帝王切開を行なう場合、羊水穿刺により胎児の肺成熟を確認することを勧めている。

  2. 甲状腺機能亢進症
    1. 妊娠成立前よりコントロールされている甲状腺機能亢進症は、比較的良好な経過をたどる。授乳に配慮し薬物を変更する程度で、十分安全に経過できる。
    2. リスクサインに気づいたら、積極的に視診、触診で甲状腺の大きさ、硬さ、圧痛などを確認する。バセドウ病の場合、血管新生による血管雑音が聞こえる。
    3. 妊娠中(とくに後期)に発見されたり、自己判断で服薬を中断したような場合、まれではあるが、分娩前後にクリーゼ(急性増悪)をみることがある。クリーゼは経験ある医師が迅速に対応しなければ、母体死亡につながる重篤な合併症である。頻度が少なく診断がおくれることが少なくない。したがって、妊娠中自己判断で服薬を中断してはならない。また、以前に治療歴がある場合などは正しく主治医に伝える必要がある。

note糖尿病

  1. 糖尿病
    インスリン作用不足による慢性高血糖を主徴とし、種々の特徴的な代謝異常を伴う症候群。1型糖尿病と2型糖尿病に分類される(表1)。1型糖尿病は従来のインスリン依存性糖尿病(IDDM)、若年性糖尿病に相当し、2型糖尿病はインスリン非依存性、成人型糖尿病に相当する。

  2. 糖尿病合併妊娠
    すでに糖尿病を発症している女性が妊娠した場合をさす。
    1. 診断
      妊娠前の糖尿病の診断には日本糖尿病学会の判定基準を用いる。
    2. 糖尿病が妊娠に及ぼす影響
      コントロールが不良で妊娠初期に高血糖が持続し、ヘモグロビンA110%以上、ヘモグロビンA1C6%以上の場合、胎児奇形のリスクが増加するが、新生児合併症は厳重な血糖コントロールである程度予防できる。流早産、子宮内胎児死亡、妊娠高血圧症候群、羊水過多症、感染症(腎盂腎炎)のリスクが増加する。
    3. 妊娠が糖尿病に及ぼす影響
       妊娠により糖尿病は悪化する。母体が将来、失明や腎透析に陥らないよう妊娠の許可基準や妊娠中の管理が重要になる。

  3. 妊娠糖尿病
    妊娠後にはじめて耐糖能異常が発症するか、発見されたものを妊娠糖尿病という。妊娠中、胎盤から分泌される性ホルモンにはインスリン拮抗作用があり、このバランスが崩れると母体は高血糖状態になる。
    1. 診断
      妊娠糖尿病の診断には日本産科婦人科学会の判定基準を用いる。
    2. 妊娠経過への影響
      胎児では巨大児が多く、糖尿病合併妊娠同様、新生児合併症を起こす可能性がある。母体では分娩後血糖値は改善するが、将来、糖尿病を発症するリスクになる。

  4. 管理
    1. 妊娠前管理
      十分な血糖コントロールを行ない、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症が活動性でないことが妊娠許可の条件になる。

    2. 妊娠中
      妊娠初期(初診時)および妊娠中期(20〜30週頃)には全例で随時血糖のスクリーニングを行なう。随時血糖で100 mg/dl以上の場合は75g糖負荷試験を行ない診断する。
      1. 血糖値コントロール目標
        空腹時(静脈血漿)100 mg/dl以下。
        食後2時間値120 mg/dl以下。
        ヘモグロビンA19%以下、ヘモグロビンモグロビンA1C5.5%以下。
      2. 栄養管理
        一日の摂取カロリーは標準体重(Kg)×(25〜35 kcal)+(妊娠前半150 kcal、妊娠後半350 kcal)を目安にし、糖質を45%(150〜200g/日)、蛋白質を20%程度配分し、残りを脂質で補う。
      3. インスリン療法
        食事療法でコントロールできない場合はインスリンを用いる。経口糖尿病薬は胎盤を通過し胎児低血糖をまねき、動物実験では胎児毒性、奇形が報告され、禁忌である。
      4. 眼底検査、腎機能検査
      5. 胎児機能検査
        発育状態、奇形に注意し、羊水量も評価する。

    3. 分娩時
      コントロールが良好であれば経腟分娩を試みる。

    4. 新生児
      1. 発育異常
        比較的軽症では胎盤を通過する糖の増加により胎児高血糖になり、胎児の成長ホルモンである胎児インスリンが増加し、巨大児になりやすい。重症例や経過の長いインスリン依存型では、血管病変(血行障害)のため胎盤機能不全となり、低体重児となる。
      2. 呼吸窮迫症候群(RDS)
        胎児のインスリン過多により肺成熟が遅れるために発症する。頻度は正常妊婦の5〜6倍に達する。
      3. 低血糖
        胎児のインスリン過多による。
      4. 周産期死亡
        先天奇形によるものが多い。
      5. その他の新生児異常
        高ビリルビン血症、低カルシウム血症、多血症、肥厚性心筋症。

表1 1型糖尿病と2型糖尿病の特徴

 

1型糖尿病

2型糖尿病

疫学
・年齢
・頻度

・
20歳以下に多い
5%以下

・
40歳以上に多い
90%以上

臨床像
・発症形式
・ケトアシドーシス
・肥満傾向

・
急性
しばしば発症
なし

・
緩徐
まれ
認められる

遺伝背景
・家族歴
・HLAとの関連

・
あり
あり

・
なし
なし

病態生理
・ランゲルハンス島
・・β細胞
・・炎症性細胞変化
・血中インスリン
・ウイルス感染

・
・
減少、破壊
初期に出現
減少
一部に認める

・
・
不定
なし
一定しない
なし

治療

食事
インスリン
・

食事
経口糖尿病薬
インスリン

note甲状腺機能亢進症

 甲状腺疾患は生殖可能年齢にある女性に好発する。ほとんどがバセドウ病だが、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の過剰分泌の場合もある。不妊や習慣性流産の原因になる。流早産、妊娠高血圧症候群、子宮内胎児発育不全、胎盤機能不全のリスクが高く、周産期死亡率が高い。しかし、最近では妊娠中の検査、治療が確立し、ほぼ正常に経過することができる。

  1. 症状
    頻脈、発汗、眼球突出(3徴候)があれば、視診、触診により甲状腺の大きさ、硬さ、圧痛などを確認する。

  2. 診断
    甲状腺血中遊離トリヨードサイロニン(FT3)、遊離サイロキシン(FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定により診断する。また、抗TSH受容体抗体(TRAb)は胎盤を通過し児に以降するため、その測定は新生児の発症予測に役立つ。ただし、妊娠初期にはヒト絨毛ゴナドトロピンにより甲状腺が刺激され、機能亢進状態になることがあり、安易に診断してはならない。

  3. 治療
    抗甲状腺剤チアマゾール(メルカゾール)、プロピルチオウラシル(チウラジール)を用いる。妊娠中は必要最少量で維持するが、分娩の刺激によりクリーゼ(急性増悪)をおこすことがあり、分娩前には増量する。
    チアマゾールは胎盤を容易に通過し、胎児の甲状腺機能低下症を誘発したり、子宮内胎児発育遅延の原因となるため、プロピルチオウラシルがすすめられる。また、プロピルチオウラシルは母乳への移行も少ない。
    甲状腺クリーゼ(頻脈、脈圧上昇、うっ血性心不全、発熱、下痢)の治療には、抗甲状腺剤、ステロイドホルモン、ジギタリスなどを用いる。

  4. 新生児
    早産児、低出生体重児の頻度が高く、一過性の甲状腺異常をみることがある(抗TSH受容体抗体陽性:TRAb)。

note甲状腺機能低下症

 未治療では妊孕性が低く、妊娠しても流産、死産に終わることが多い。甲状腺ホルモンの補充治療を行なう。

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