リスクサイン
気管支喘息
・リスク1:喘息の既往.
・リスク2:せき.喘鳴.
・リスク3:呼吸困難.
結核
・リスク1:せき.痰.発熱.
・リスク2:血痰.喀血.
・リスク3:呼吸困難.
過換気症候群
・リスク1:不安.疼痛(陣痛).呼吸数の増加.
・リスク2:しびれ.頻脈.動悸.手のふるえ.
・リスク3:意識障害.痙攣.
病態生理
妊娠中は子宮の増大による横隔膜の挙上により、予備呼気量と残気量が減少する。呼吸数は変化せず、一回換気量が増加し分時換気量が増加する。これによりPaCO2は低下し、呼吸性アルカローシスとなる(血液がアルカリ性に傾く)。これは胎児から母体へのCO2輸送を効率的に行なうための合目的な変化である。
気管支喘息
気管支喘息は気管支の攣縮や粘膜浮腫による気道狭窄と気道の炎症により特徴づけられる。喘息による母児への直接的な影響はないが、重症発作時の低酸素血症の程度によっては胎児ジストレス、胎児死亡をおこす可能性がある。
アレルギー(即時型および遅延型)、感染、心因、内分泌自律神経失調などに気道の過敏性亢進が加わって発症する。
- 診断
- 臨床所見(呼吸困難、せき、既往歴)。
- 呼気の延長、喘鳴音。
- 好酸球の増加、PaO2の低下、胸部X線撮影。
- 治療
β刺激剤、キサンチン誘導体、抗アレルギー剤、ステロイド剤などを用いる。分娩誘発に用いるプロスタグランジンは気管支収縮作用があり禁忌。
肺結核
結核菌は好気性グラム陽性桿菌で抗酸菌と呼ばれる。感染経路のほとんどが経気道で肺結核が最も多い。日本の罹患率(人口10万人に対し33.9)は他の先進諸国(人口10万人に対し5〜10)に比べ非常に高い。
妊娠中、悪化することはなく、経胎盤感染もほとんどないが、活動性がある場合は治療を行なう。
- 診断
- 臨床所見(2週間以上遷延するせき、痰、発熱)。
- ツベルクリン反応(10 mm以上で陽性)、胸部X線撮影でスクリーニングする。
- 喀痰検査(培養、塗抹)による結核菌の証明が確定診断。
- 治療
通常はイソニアジド(催奇形性なし)、リファンピシン(四肢短縮症の危険性)の2剤を併用する。排菌があるか治療が終了していない場合、分娩後、児を母親から隔離しなければならない。
過換気症候群
過換気症候群は器質的な障害がなく、発作的に肺胞過換気を生じる状態をいう。妊娠中は、前述の変化により胸式呼吸、多呼吸になりやすく、相対的な呼吸性アルカローシス状態にある。さらに、不安や精神的気質の誘因が加わることで発症しやすい。