リスクサイン
リスク1:つわり.少量性器出血
リスク2:妊娠悪阻症状.持続する性器出血
リスク3:せき.頭痛.月経以上の性器出血
病態生理
胞状奇胎、絨毛癌、存続絨毛症を総称して絨毛性疾患という。
胞状奇胎は絨毛性疾患の中でも代表的な疾患であるが、日本では古くは“ぶどうっこ”として知られた疾患であり、発生率は欧米の3〜4倍以上で0.2〜0.3%と高率である。日本の他、東南アジアやメキシコにも多発し、40歳以上の女性に多い。
通常、子宮内に妊娠が成立すると、子宮内膜に脱落膜および絨毛膜が形成されるが、この絨毛膜の絨毛が嚢胞化し、つぶつぶと水ぶくれした水腫状に認められるものを胞状奇胎という。子宮内容が胞状奇胎のみで占められていることもあるが、胞状奇胎とともに、胎児部分を認めることもある。原因は妊卵の異常による。胎嚢や胎児部分を認めない全胞状奇胎の場合、胞状奇胎の有する染色体はすべて父由来即ち精子由来の雄性発生であることが知られており、大部分は46XXである。一方、胎芽や胎児部分を一部に認める場合は部分胞状奇胎と呼ばれるが、3倍体すなわち69本の染色体を有する染色体異常が多く認められる。
治療
治療としては、子宮内容除去術を一度施行後、子宮内に遺残のないようもう一度子宮内容除去術を施行する。自覚症状が全くない場合も、さらにヒト絨毛性ゴナドトロピンの推移を最低6ヶ月間経過観察を必要とする。
ヒト絨毛性ゴナドトロピンが速やかに低下する方が良く、低下してくる速度には経過順調型か、否かを決める基準がある。経過非順調型では、絨毛細胞残存が疑われ、抗癌剤を用いた化学療法が必要である。非順調型では続発性絨毛癌の発生に留意し、CTスキャンやMRIにより全身を検索し絨毛癌診断スコアを用い、臨床的侵入奇胎か臨床的絨毛癌を診断する。経過観察中の頭痛、咳には注意を要する。