リスクサイン
早期流産(妊娠12週まで)
リスク1:少量性器出血.腹部緊満感.
リスク2:月経以上の出血.月経痛程度の腹痛.
リスク3:なし.
後期流産(妊娠12から22週まで)
リスク1:腹部緊満感.
リスク2:少量の出血.腹痛.
リスク3:月経以上の出血.月経痛程度の腹痛.
病態生理
流産とは妊娠22週未満の妊娠中絶をさし、妊娠12週未満のものを早期流産、妊娠12週以降22週未満のものを後期流産という。妊卵が何らかの原因により死亡した場合、通常数日から4週間頃までに子宮外へ排出される。妊娠8週未満の胎芽では、酵素により自己溶解をおこし羊水中に完全に吸収されることが多い。それ以降の胎児では、完全に溶解されることが困難で、その一部が浸軟した状態になる。浸軟は不完全溶解であり、細菌性の腐敗ではない。また、まれに浸軟とは逆に身体の水分が失われミイラ化、さらには石灰化することもある。
子宮収縮の発生機序については明確にされていないが、妊卵の死亡によるヒト絨毛性ゴナドトロピンの低下や溶解、浸軟変化に対する異物(拒絶)反応と推察される。
原因
様々な原因があげられるが、実際には原因不明の場合が多い。
- 胎児側因子
早期流産(妊娠12週未満のもの):病的卵、異常発育卵(奇形)、染色体異常など胎児側の異常による。流産に至った絨毛の2/3に染色体異常が認められる。
後期流産(妊娠12〜22週のもの):胎児側因子には、胎盤、臍帯、卵膜の異常がある。
- 母体側因子
- 性器異常
子宮奇形、子宮発育不全、子宮筋腫、頸管無力症
- 感染症
梅毒、単純ヘルペス、風疹、マイコプラズマ、サイトメガロウイルス、パルボウイルス、クラミジア感染症など。
- 偶発合併症
心疾患、腎疾患、自己免疫疾患(膠原病)、内分泌疾患(甲状腺機能低下症、糖尿病)悪性腫瘍など。
- その他
生活環境、薬物使用、被爆、外傷など
治療
- 切迫流産
妊娠12週未満の切迫流産治療にEBMはない。感染症や母体の偶発合併症など原因が明らかなものはそれぞれ原疾患の治療を行なう。しかし、胎児側の因子が疑われる場合や原因の明らかでない場合、安静、ホルモン投与(黄体ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、子宮収縮抑制剤など、これまで行なわれてきた治療の有効性は証明されていない。
妊娠12週以降の切迫流産は、感染症や頸管無力症など母体因子によるものが多く、切迫早産の治療に準じる。
- 早期流産(妊娠12週未満のもの)
- 完全流産
出血、腹痛がなく超音波検査上、子宮腔内に胎嚢および肥厚した内膜を認めず、ヒト絨毛性ゴナドトロピン値(hCG)が非妊時のレベルに低下していれば、自然経過観察する。
- 不全流産、進行流産、稽留流産
頸管を拡張後、流産手術(子宮内容除去術)を行なう。
- 後期流産(妊娠12週以降22週未満のもの)
- 陣痛誘発
頸管拡張とプレグランディン腟座薬、プロスタグランジンE2の内服、プロスタグランジンF2α、オキシトシンの点滴静注を行なう。
- 自然排出を待つ。
●習慣性流産
連続3回以上の自然流産をくり返したものをさす。抗リン脂質抗体症候群、抗DNA抗体、抗SS-A抗体などを有する免疫異常、夫婦の染色体異常、内分泌障害(甲状腺機能異常、糖尿病)などが原因にあげられているが、95%は原因不明である。