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(5)産褥精神障害
リスク1:気分の低下.涙もろさ.不眠. リスク2:妄想.幻聴.幻覚.幻視.興奮.錯乱. リスク3:自殺念慮.殺児念慮.
マタニティ・ブルーズ 最も多く遭遇する疾患はマタニティ・ブルーズである。 一過性の疾患で必ず改善することを説明する。この説明は褥婦のみならずその家族にも行なう。中には偏見をもち、後の育児や家庭生活に影響を及ぼすこともある。 無理に褥婦の気分を高める必要はなく、話をよく聞き、指導(授乳、沐浴など)も褥婦のペースにまかせる。達成できないものについては、後日あらためて指導するか、家族にアドバイスしても良い。 産褥期うつ病、産褥精神病 精神疾患をもつ褥婦と接する場合、特別な意識を持つ必要はない。よく話を聞いて、誠実に対応するという点では、他の疾病を持つ褥婦と同じである。 のんき、根気、元気を指導指針に掲げ対応する専門施設もあり、その対応には忍耐がいる。 対応のポイントは、対話の進行を焦らず、まず待つこと、次に、もうひとつ待つこと、そして、肯定的に話し、些細なこともほめる。 患者は集中力が落ちており、話は友人同士で使うような単純、明快な言葉で、抽象表現や前置きはおかないようにする。 家族へのサポート 精神疾患をもつ褥婦では、家族へのアドバイスが重要になる。 家族は患者を抱えることで大変な思いをしている一方、褥婦にとっても家族が負担になることがあり、双方に悪循環になっていることがある。 こうした場合、家族の対応技術を高める必要がある。 回復には時間がかかること、悪いところばかりを見ず、良いことをほめること、子ども扱いせず、無理のない約束をつくることなどをアドバイスし、家族自身も自分の時間を大切にするよう説明する。
産褥期は精神的に不安定になる。この時期の精神障害はマタニティ・ブルーズ、産褥期うつ病、産褥精神病に大別される。
概念 分娩後1〜2ヶ月以内に発症する。一般のうつ病より長期化しやすく、育児の障害が問題になる。母子の相互関係が損なわれると、児の発育も障害される。産後1ヶ月で産婦人科への通院が終わるため、その後の発症が見過ごされ、発見が遅れることが多い。 頻度 入院を要する重症例は、褥婦の0.1〜0.3%程度であるが、軽症を含めた場合10〜15%とマタニティ・ブルーズ同様高率になる。 症状 1) 軽症:気分の低下、涙もろさ、不眠、食欲低下。 2) 重症:自殺念慮、殺児念慮。 治療 三環系抗うつ薬、抗不安薬を用いる。重症例は入院管理する。