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>TOP>情報コーナー「周産期看護マニュアル」top妊娠中期>子宮内胎児死亡

book「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
(中井章人著,東京医学社)より  (全体の目次はこちら)


I.異常・疾病からみたリスクサイン

2.妊娠中期(15週から28週まで)のリスクサインと対応 
  (一覧はこちら)

(6)子宮内胎児死亡

note概要

    1. 妊娠時期を問わず、子宮内で胎児生存が確認されたあと、胎児心拍動、運動などの生命現象が全く消失し死亡した状態をさす。
    2. 妊娠10ヶ月に最も多く、ついで妊娠5〜6ヶ月に多い。
    3. 原因は子宮内発育遅延と同様、母体、胎盤、臍帯因子に分類される。
    4. 自覚症状には不正性器出血、下腹部痛、腹緊、子宮増大感の停止、乳房緊満低下、胎動の消失がある。
    5. 超音波断層法にて診断がつき次第、速やかに胎児および付属物を娩出する。

noteリスクサイン

リスク1:子宮内胎児発育遅延.妊娠高血圧症候群.糖尿病合併妊娠.胎児奇形.
リスク2:下腹痛.性器出血.胎動の減少.
リスク3:胎動の消失.

noteリスクサインへの対応

  1. 日常生活サポート
    1. 妊娠5ヶ月以降、多くの妊婦は胎動を自覚する。しかし、自覚には個人差があり初期にはごくわずかな感覚で明確ではないこともある。また、外出や就労中はなかなか胎動を自覚できない場合もある。こうした場合は帰宅後30分間程度安静にし、胎動を確認したい。
    2. いかなる労作(運動)であっても、胎児がストレスと感じた場合、運動後に胎動が減少する。妊娠中期から後期における目安は、運動終了後の30分間で、正常な場合は少なくとも1 - 2回以上の胎動が出現する。
    3. 子宮内胎児発育遅延、妊娠高血圧症候群などリスク因子を有するハイリスク妊婦では胎児モニターの有益性が証明されており、わずかな異常を感じた場合でも、専門医を受診するべきである。

  2. 看護ポイント
    1. 本症が発症した場合、児を速やかに娩出しなければならない。本症が予知されることはまれで、妊婦の多くは突然その告知を受けている。したがって、児の死亡を十分に受け入れられない状態で、医療介入を受けなければならないことも少なくない。
    2. 分娩後、死産児への対面や家族の時間をつくり、妊婦が現実を受け入れて行く支援を行なう。
    3. 死産児に外表奇形があるような場合でも、その後の心身の回復や家族関係を構築して行くうえで、死産児との面会は行なうことが勧められる。

note病態生理

 妊娠時期を問わず、子宮内で胎児生存が確認されたあと、胎児心拍動、運動などの生命現象が全く消失し死亡したものを子宮内胎児死亡(intrauterine fetal death:IUGR)という。原因は子宮内発育遅延と同様、母体、胎盤、臍帯因子に分類される。妊娠10ヶ月に最も多く、ついで妊娠5〜6ヶ月に多い。
 妊娠初期では胎児の死後、酵素により自己溶解をおこし羊水中に完全に吸収されることが多い。それ以降の胎児では、羊水と体液の浸潤と自己溶解により表皮は軟化し、浸軟児と呼ばれる。浸軟?度は表皮の水泡形成ないし、これが崩壊剥離して暗赤色の真皮を露呈する。浸軟?度は深部組織ならびに体内臓器の弛緩軟変(流動性)が出現する。

 死亡胎児が子宮内に長く留まると、胎児の組織トロンボプラスチンが母体内に吸収され、フィブリノ−ゲン消費が起こり、播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症することがある。

note症状

 妊娠初期は無症状のこともある。妊娠中期以降では不正性器出血、下腹部痛、腹緊、子宮増大感の停止、乳房緊満低下などがある。胎動の自覚がある場合は胎動が消失する。

note診断

  1. 超音波断層法
    胎児心拍の消失を確認する。

  2. X線診断
    母体の腹部単純X線で胎児頭蓋骨の屋根瓦状の重積(スパルディング徴候)、脊柱の強い屈曲(ブレイクマン徴候)を認める。

  3. 胎盤性ホルモン
     エストリオール、ヒト絨毛性ゴナドトロピンの低下。

note治療

 診断が確定したら、できるだけ早期に胎児および付属物を娩出させる。妊娠12週までは子宮内容除去術を行ない、それ以降はラミナリア、メトロイリンテルにより頸管拡張を行ない、陣痛誘発する。

日本医科大学多摩永山病院 女性診療科・産科医局
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