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>TOP>情報コーナー「周産期看護マニュアル」top産褥>産褥熱

book「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
(中井章人著,東京医学社)より  (全体の目次はこちら)


I.異常・疾病からみたリスクサイン

 5.産褥のリスクサインと対応(一覧はこちら)

note概要

    1. 産褥10日目までに2日以上にわたり38℃以上の発熱をきたす子宮、腟、外陰部への細菌感染に由来する熱性疾患を産褥熱という。
    2. 産褥子宮内膜炎では子宮に圧痛を認め、悪露は膿汁様で悪臭がある。
    3. 悪露滞留では子宮に圧痛はなく、悪露は減少する。

noteリスクサイン

リスク1:帝王切開.鉗子分娩.悪露の減少.
リスク2:発熱.
リスク3:骨盤腹膜炎.敗血症性ショック.

note産褥看護ポイント

 産褥期1週間以内の発熱にはしばしば遭遇する。大部分は乳汁うっ滞や軽い乳腺炎、あるいは悪露滞留などによるもので、本稿で示した子宮内膜炎は比較的まれである。しかし、一旦発症すれば難治性で、さらなる重症感染症に発展する危険がある。

  1. 産褥期に体温評価を行なう場合、腋下用の体温計では乳房緊満、乳汁うっ滞などが影響するため、口腔内用の体温計が勧められる。鼓膜音なども安定した評価が行えるが、深部体温のため通常の温度より約0.5〜1℃程度は高めになる。
  2. 発熱をみた場合、まず子宮収縮と悪露の性状を確認する。
  3. 悪露があまり排出していない場合は、悪露滞留が疑われる。内診指を頸管内に進め、通過性を確認する。この際、用手的に頸管拡張を試み、中等量の悪露流出が促されれば、数時間後に解熱する。
  4. 悪露が流出し悪臭があり、かつ、子宮に圧痛が認められれば、子宮内膜炎の可能性が高く、速やかな医療介入が必要になる。

note概念

 何らかの原因による子宮、腟、外陰部への細菌感染に由来する熱性疾患を産褥熱とよぶ。産褥10日目までに2日以上にわたり38℃以上の発熱をきたす。

note産褥子宮内膜炎

    1. 原因
      前期破水、絨毛膜羊膜炎、帝王切開、鉗子分娩、卵膜・胎盤遺残などが原因疾患になり、起炎菌としては大腸菌が多い。

    2. 症状
      1. 分娩後3〜5日で発熱をもって発症する。
      2. 悪露は膿汁様で悪臭がある。
      3. 子宮収縮は不良で、子宮の自発痛、圧痛を認める。
      4. 長期に及べば骨盤腹膜炎、敗血症に至ることもある。

    3. 治療
      1. 抗生物質、子宮収縮剤(麦角剤)投与。
      2. 腟、子宮内洗浄により悪露排出を促進する。
      3. 子宮内容除去術は禁忌である。

note悪露滞留

  1. 原因
    弱毒菌による悪露の感染だが、子宮後屈、膀胱充満などにより悪露が子宮内に滞留し発熱の原因になる。また、子宮口が開大していない予定帝王切開術が原因になることもある。悪露の流出により速やかに改善する。

  2. 症状
    1) 分娩後3日前後に発熱をもって発症する。
    2) 子宮は柔らかくやや大きいが圧痛はない。

  3. 治療
    頸管拡張術により悪露の流出を促す。悪露の排出により速やかに解熱する。

日本医科大学多摩永山病院 女性診療科・産科医局
〒206-8512 多摩市永山1-7-1 042-371-2111(代表)

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