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>TOP>情報コーナー「周産期看護マニュアル」top>偶発合併症>感染症 「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
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胎内感染 |
産道感染 |
母乳感染 |
ウイルス |
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クラミジア・トラコマチス |
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◎ |
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細菌 |
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真菌 |
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原虫 |
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◎ 高頻度、○ 稀
(西島重光. コンパス産婦人科. MEC出版より引用一部改編)
表2 感染症の胎児、新生児への影響
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主症状 |
TORCH症候群 |
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B型肝炎ウイルス |
肝炎、黄疸 |
性感染症 |
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パルボウイルス |
胎児水腫 |
- トキソプラズマ(Toxoplasma)
- その他(Others)
- 風疹(Rubella)
- サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)
- 単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)
の頭文字をとりまとめたもので、母子感染の原因となる疾患群である。胎児期では習慣性流産、子宮内胎児発育遅延、胎児水腫、子宮内胎児死亡のリスクがあり、新生児では心奇形、精神運動障害、聴力障害(感音性難聴)、肝脾腫などの原因となる。
- トキソプラズマ症
- 原因と診断
猫、豚に寄生するトキソプラズマ原虫による。血中トキソプラズマ抗体(Ig M)陽性により診断する。- 母子感染経路
胎内感染(経胎盤感染)のみ。- 治療
アセチルスピラマイシン(1.6〜2 g/日、1ヶ月を1クールとし、1〜2クール)。- 予防
猫の糞から感染するものや過熱処理が不十分な豚、鳥、羊肉などを食べて感染することが多く、妊娠中これらをさけることが望ましい。
- 風疹
- 原因と診断
ルベラウイルス。血中風疹抗体(HA)256倍以上が初感染ハイリスク群で、IgM陽性により診断する。- 母子感染経路
胎内感染(経胎盤感染)のみ。- 治療
対症療法。- 予防
妊娠前にワクチン接種をしておくことが望ましい。接種後、2ヶ月間は避妊する。
新生児の先天性風疹症候群(白内障、心奇形、聴力障害)は妊娠5ヶ月までの感染によるため、その時期までの感染者との接触には十分注意する必要がある。妊娠3ヶ月までの感染による発症率は10〜40%と極めて高い。
- サイトメガロウイルス
- 原因と診断
サイトメガロウイルス。サイトメガロウイルス抗体陽性により診断する。- 母子感染経路
大部分が産道(垂直)感染だが、胎内感染(経胎盤感染)、母乳感染もおこる。- 治療
なし。- トピックス
以前、本邦では90%以上の妊婦がサイトメガロウイルス抗体を保有しており、妊娠中の初感染による先天性サイトメガロウイルス感染症(小頭症、網膜脈絡膜炎、肝脾腫、巨細胞封入体症など)は稀であった。垂直感染により50〜60%の乳児が生後1年以内に抗体を保有する。しかし、近年抗体保有率が低下し、妊娠中の初感染が問題となっている。
- 性器ヘルペス
- 原因と診断
性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルスII型(Herpes simplex virus II)による。?型は主に上半身(口唇、顔面、眼瞼など)から分離される。外陰部細胞診、血中IgM抗体陽性により診断する。- 母子感染経路
主に産道感染だが胎内感染(経胎盤感染)もある。- 治療
抗ウイルス剤(バルトレックス1000mg/日、ゾビラックス軟膏)の内服、軟膏塗布を行なう。- 予防
産道感染を防ぐため以下の管理を行なう。
- 初感染
発症より1ヶ月以内は帝王切開。- 再発型
発症より1週間以内は帝王切開。
- B型肝炎
- 原因と診断
B型肝炎ウイルス(HBV)。HBs抗原陽性により診断する。HBVキャリア(HBs抗原陽性者)ではHBe抗原検査を行ない、その陽性者は母子感染のリスクが高い。また、HBs抗原は胎盤を通過しないが、HBe抗原は通過するため、胎内感染をおこしやすい。- 母子感染経路
主に産道感染だが胎内感染(経胎盤感染)もある。- 治療、予防
HBVキャリア(HBs抗原陽性者)から生まれた新生児は全例出生直後に、抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を投与し、その後、HBワクチンを追加投与する。
- C型肝炎
- 原因と診断
C型肝炎ウイルス(HCV)。HCV抗体陽性により診断する。陽性者ではHCV RNA定量を行ない、高値であれば母子感染のリスクが高いと判断する。HCV RNAが陰性であれば自然治癒と考える。- 母子感染経路
主に産道感染。まれに胎内感染(経胎盤感染)もある。- 治療
妊娠中のインターフェロン療法は確立していない。
- 梅毒
- 原因と診断
トレポネーマパリズム(細菌)。梅毒血清試験(STS)によりスクリーニングし、陽性の場合確認試験を行なう。- 母子感染経路
胎内感染(経胎盤感染)、産道感染。分娩6週間前の感染では胎内感染は起こらない。- 治療
母体抗生物質投与(ペニシリン:ビクシリン2000 mg/日、サワシリン1000mg/日)。治療後もSTSは陰性化せず、TPHA抗体価の推移で治療効果を判定する。- 予防
感染早期に母体治療を行なえば先天梅毒を予防できる。
- 淋病
- 原因と診断
淋菌。頸管粘液中淋菌抗原陽性か培養で淋菌を検出し診断する。- 母子感染経路
産道感染。- 治療
セフェム系抗生物質(フロモックス300 mg/日、パンスポリンT錠300 mg/日)投与。
- クラミジア感染症
- 原因と診断
クラミジアトラコマタス。頸管粘液中クラミジア抗原陽性で診断する。血中IgA抗体は活動性の指標になる。- 母子感染経路
産道感染。- 治療
妊娠中の治療薬はクラリシッド(400 mg/日 14日間)を用いる。
- HIV感染症
- 原因と診断
human immunodeficiency virus(HIV)。酵素抗体法によるスクリーニング検査で陽性の場合は、ウエスタンブロット法による抗体確認検査かPCR法によるHIV抗原検査を行なう。- 母子感染経路
産道感染が半数以上を占めるが、胎内感染、母乳感染も起こす。- 治療
母体、新生児に抗HIV治療薬を用いる。妊婦では妊娠14週以降できるだけ早期にAZT(レトロビルィ600 mg/日)服用を開始し、ウイルス量低下やCD4陽性リンパ球数増加が認められない場合、多剤併用療法に切り替える。- 予防
感染対策により母子感染は陽性者の2%まで減少している。母子感染の観点から帝王切開が原則となる。
- パルボウイルス感染症(リンゴ病)
- 原因と診断
ヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)。母体血中抗ヒトパルボウイルスB19抗体陽性により診断する。- 母子感染経路
一般には飛沫感染で、紅斑出現前が感染力の強い期間で紅斑が出現する第10病日以降は感染しない。母子では妊娠16〜24週で胎内(経胎盤)感染する。- 治療
母体には対症療法。胎児水腫が出現する場合は、胎児輸血やジギタリス投与を行なうことがある。
- インフルエンザ
- 概略
インフルエンザウイルスにより、妊娠初期には25〜40%に流早産が発生し、胎児奇形(無脳児、脊椎破裂など)の原因にもなる。母体肺炎合併例や妊娠末期の発症例では母体死亡にいたることもある。
咽頭拭い液やうがい液におけるウイルス分離で診断する。迅速抗原検出キットで、A型とB型は検出できるが、A型の亜型は判別できない。- 予防
妊娠期間が流行期(12月〜2月頃)にかかる場合は、妊娠初期を除きインフルエンザワクチンを摂取しておくことが望ましい。
- 成人T型白血病ウイルス
- 概略
成人T型白血病ウイルス?型(HTLV-?)による。主に母乳感染だが、まれに産道感染、胎内感染する。日本南西部に多く、40〜60才で発症するが発症率はキャリアの0.1%未満。- 予防
母乳分泌を抑制することで、母子感染は予防できるが、他の経路(性感染、輸血など)による感染は回避できない。
- 水痘
- 原因と診断
水痘帯状疱診ウイルスの飛沫感染による。発疹出現1〜2日前から水泡が痂皮化するまで7〜10日間に感染力を持つ。- 母子感染経路
主に産道感染だが、まれに胎内感染(経胎盤感染)する。したがって、先天性水痘症候群の発症はまれだが、分娩直前の母体感染後20〜40%に新生児水痘が出現する。特に分娩前4日以内の水痘の場合は重篤になる。- 治療
- 母体
安静、抗生物質による対症療法。分娩直前感染の場合、子宮収縮抑制剤による分娩遅延や静注用グロブリン(ベノグロブリン-I、ベニロン)を投与する。- 新生児
分娩直前感染の場合、母親からの隔離、授乳禁止、静注用グロブリン投与を行なう。
- 麻疹
- 概略
急性麻疹ウイルス(measles virus)の飛沫感染により約10日間の潜伏期間後発症する。発症前1〜2日から発疹、水泡出現4〜5日頃まで感染力を持つ。胎児では流早産のリスクがある。- 感染経路
まれだが胎内感染(経胎盤感染)する。- 予防
妊娠前の予防接種が望ましい。妊娠中は生ワクチンのため接種は禁忌。近年、母体の抗体保有率が低下し、経胎盤的移行抗体の欠如による新生児、乳児期の麻疹の増加が危惧されている。
- B群連鎖球菌感染症
- 概略
新生児B群連鎖球菌感染症は細菌性母子感染の代表的な疾患である。母子感染経路は産道感染で、生後7日以内(特に24時間)の発症では、新生児肺炎から重篤な呼吸障害、敗血症へと増悪することが多い。- 予防
母体腟分泌物からB群連鎖球菌が検出される場合、分娩直前にペニシリン系抗生物質(ビクシリン2 g)を点滴静注する。
- 劇症型溶血性連鎖球菌
- 概略
A群溶血連鎖球菌感染症の劇症型で成人、高齢者に好発する。「人喰いバクテリア」の異名があり、短時間(24時間)以内に多臓器不全になり母体死亡にいたる(母体死亡率50%以上)。母子感染はない。- 予防
新生児B群連鎖球菌感染症は細菌性母子感染の代表的な疾患である。経妊婦の場合、児からうつされることが多く注意が必要。咽頭培養などでA群溶血連鎖球菌が同定されれば、早期にペニシリン系抗生物質(ビクシリン750 mg/日)を内服する。
妊娠中のワクチン接種は原則的には禁忌となっているが、妊娠期間に感染症流行時期が一致する場合や海外旅行の際にその可否が問題となる。
ワクチンには生きた病原体を弱毒化した生ワクチンと死菌あるいはトキソイド(毒素)のみを用いる不活化ワクチンがある。生ワクチンは避けなければならないが、不活化ワクチンでは使用可能なものもある(表3)。
表3 妊産婦への予防接種
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可否 |
生ワクチン |
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不活化ワクチン |
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(日母医報1990, 11より一部改変)
◎ 積極的に勧められる
○ 必要な状況なら勧められる
△ 必要な状況なら使用可
× 不可