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>TOP>情報コーナー「周産期看護マニュアル」top新生児>新生児黄疸

book「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
(中井章人著,東京医学社)より  (全体の目次はこちら)


I.異常・疾病からみたリスクサイン

 6.新生児のリスクサインと対応(一覧はこちら)

note概要

    1. 血液中のビリルビン濃度の上昇により、皮膚や眼球結膜が黄染する状態を黄疸という。
    2. 生後4〜5日目に増強し自然消失する生理的黄疸と早発型、遅延型、遷延型などに分類される病的黄疸がある。
    3. ビリルビン濃度が高値の場合、光線療法、交換輸血が行なわれる。
    4. 未熟児では脳血管関門が未熟なため、核黄疸が起きやすく厳重に管理しなければならない。

noteリスクサイン

リスク1:生理的黄疸.
リスク2:早発型黄疸.遅延型黄疸.遷延型黄疸.筋緊張低下.嗜眠.
リスク3:後弓反張.発熱.痙攣.落陽現象.

note新生児看護ポイント

  1. 新生児黄疸には頻繁に遭遇する。大部分は生理的な黄疸で経過観察により軽快する。
  2. 生理的な黄疸であれば母乳を中断することはない。
  3. 経皮的なビリルビン測定で、異常値があれば必ず、血中ビリルビン値を確認する。

note病態生理

 血液中のビリルビン濃度の上昇により、皮膚や眼球結膜が黄染する状態を黄疸という。新生児の赤血球のライフスパン(寿命)は約80日(成人は120日)で、赤血球が脾臓などの網内系で破壊されると、赤血球中のヘモグロビンが代謝され、間接ビリルビンとなる。間接ビリルビンは血中のアルブミンと結合し、肝臓に運ばれグルクロン酸抱合をうけ、直接ビリルビンとして胆汁とともに腸管に排出される。

 子宮内でのビリルビン代謝は胎盤で行なわれており、胎児が黄疸になることはない。しかし、出産後は新生児が自らの肝臓でビリルビンの代謝を行なわなければならない。新生児の肝臓が十分な代謝機能を発揮するため約1週間を要し、この間、生理的な黄疸が発生する。

note生理的黄疸

 生後1日以降出現し、4〜5日前後をピークに消退して行く。血中ビリルビン値の結果により、日齢と出生体重で定められた治療基準に従い、光線療法を行なうが、交換輸血が必要になることはない。

note母乳黄疸

 母乳栄養では生理的黄疸が遷延する。母乳によるグルクロン酸抱合阻害が原因と考えられるが、核黄疸(後述)などのリスクはきわめて少ない。光線量法などの適応にならないがぎり、母乳栄養を中断する必要はない。

note病的黄疸

 血液型不適合妊娠などの胎児溶血による早発型黄疸、感染による遅延型黄疸、代謝障害や新生児肝疾患などによる遷延型黄疸がある。生理的なものに比べ重症化しやすく、光線療法に加え交換輸血が必要になることもある。

note核黄疸

 新生児、とくに未熟児では、脳血管関門(brain-blood barrier: BBB)が未熟である。間接ビリルビン濃度が上昇し、アルブミンと結合していないフリーのビリルビンが増えると、そのビリルビンは容易に脳血管関門を通過し、脳基底核に沈着し脳障害を発症する。この状態を核黄疸とよぶ。原因は前述の病的黄疸による。

  1. 症状、経過
    1. 第1期:筋緊張低下、嗜眠により発症。
    2. 第2期:後弓反張(後方にのけぞる姿勢)、発熱、痙攣、落陽現象が出現する。
    3. 第3期:痙攣症状が消失するが、重症例ではこの時期に死亡する。
    4. 第4期:生存すれば脳性麻痺や感音性難聴などにいたる。

  2. 予防、治療
    黄疸増強因子(呼吸障害、低血糖、感染、脱水など)を除き、第1期以前に光線量法や交換輸血を行なう。しかし、その後の症状に効果的な治療はない。

日本医科大学多摩永山病院 女性診療科・産科医局
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