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>TOP>情報コーナー「周産期看護マニュアル」top妊娠後期>過期産

book「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
(中井章人著,東京医学社)より  (全体の目次はこちら)


I.異常・疾病からみたリスクサイン

 3.妊娠後期(29週から42週まで)のリスクサインと対応
   (一覧はこちら

note概要

    1. 妊娠42週以降に分娩にいたるものを過期産という。予定日を過ぎて42週未満のものは予定日経過という。
    2. 基礎体温による排卵日の推定、妊娠8〜12週の頭殿長(CRL)の測定値などにより分娩予定日が正しいかどうかを検討し診断する。
    3. 胎盤機能不全や羊水過少により低酸素症、低血糖症、胎児ジストレスが発生しやすい。
    4. 母体では遷延分娩になりやすい。
    5. 妊娠41週3〜4日頃より分娩誘発を行なう。

noteリスクサイン

リスク1:予定日経過.
リスク2:未受診妊婦.羊水過少.
リスク3:胎動減少.

noteリスクサインへの対応

  1. 日常生活サポート
    1. 必ず妊娠週数を確かめる(妊娠週数は妊娠管理の基本である)。
    2. 正しい妊娠週数の算定には妊娠初期の健診が必須である。妊娠8〜12週の頭殿長はわずかな誤差(前後3日間程度)で妊娠週数を確定できるが、それ以降の週数における大横径や大腿骨長ではばらつきが大きく正確な週数は推定できなくなる。
    3. 妊婦健診を受けていなかった妊産婦(未受診妊婦)は最終月経の記憶もあいまいで、仮に28日型の月経であったとしても、妊娠が成立した周期の正確な排卵日を断定することはできない。
    4. 予定日経過では母体、胎児に異常がない限り、散歩や外出などを積極的に行なう。妊娠中の運動経験がある場合は、少なくとも41週までは継続する。
    5. 前駆陣痛や血性分泌物(産徴:おしるし)があっても、安静にする必要はない。

  2. 看護ポイント
    1. 過期妊娠の治療法は分娩誘発につきる。しかし、分娩誘発そのものに拒否感を抱く妊産婦も少なくない。この場合は、過期妊娠が胎児に及ぼすリスクを十分に説明し、理解を得たい。計画分娩ではなく、児の救命のための分娩誘発なのである。
    2. 実際の処置にあたっても、妊婦の理解と協力がなくして誘発は成功しない。人工的な陣痛が妊婦にとって苦痛ではなく、児の誕生への喜びにかわるよう精神的にも十分なサポートを心掛けたい。

note病態生理

 妊娠42週以降に分娩にいたるものを過期産という。妊娠初期に超音波検査による予定日修正が行なわれるようになり、みかけ上の過期妊娠が減少し頻度は1%前後である。

 陣痛発来のメカニズムは解明されていないが、母児にとって分娩には至適時期がある(正期産)。何らかの障害によりその時期に陣痛が発来せず妊娠が継続した場合、胎盤が老化し胎盤機能不全をきたす傾向になる。胎盤循環障害が起こる場合は酸素と栄養(主にブドウ糖)の供給が低下し、低酸素症や低血糖症が発生しやすい。妊娠40週を過ぎると羊水量は急激に減少し、42週では平均200 mlと羊水過少になる。羊水は黄染し、胎盤、胎児も黄緑色に着色し、胎児は胎脂欠乏による皮膚の乾燥、落屑、亀裂をおこす。この状態をクリフォード症候群(胎盤機能不全症候群)というが、多くは突然胎児死亡を起こす。また、過期妊娠では25〜35%に胎便排出がみられ、胎便吸引症候群(meconium aspiration syndrom: MAS)を生じやすい。

 母体では妊娠継続による精神的、肉体的負担が増加し、微弱陣痛や遷延分娩のため帝王切開が多くなる。

note症状・診断

 分娩予定日が正しいかどうか検討する。基礎体温による排卵日の推定、妊娠8〜12週の頭殿長(CRL)測定が最も正確に週数を推定できる。妊娠中期以降に週数を推定しなければならない場合は、妊娠13〜20週では大横径(BPD)、21〜36週では大腿骨長(FL)を用いるが、頭殿長ほど正確ではない。

 過期妊娠と診断されれば、NST、バイオフィジカルプロファイルスコアーなどにより十分な胎児管理を行なう。

note治療

 速やかに分娩誘発を行なう。妊娠42週以降は胎児の予備能力低下や羊水過少のため、胎児ジストレスが発生しやすく、実際には妊娠41週3〜4日頃より分娩誘発を行なう。

note予後

 分娩予定日を長期にわたり過ぎるほど、児の予後は不良である。その原因は胎盤機能不全とそれに伴う過熟児、遷延分娩による胎児障害などである。したがって、診断後も胎児環境の検査と分娩管理が重要になる。

日本医科大学多摩永山病院 女性診療科・産科医局
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