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>TOP>情報コーナー「周産期看護マニュアル」top妊娠後期>前期破水

book「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
(中井章人著,東京医学社)より  (全体の目次はこちら)


I.異常・疾病からみたリスクサイン

 3.妊娠後期(29週から42週まで)のリスクサインと対応
   (一覧はこちら

note概要

    1. 陣痛が発来する前に卵膜が破綻し、羊水が子宮外に流出した場合を前期破水(PROM)いう。妊娠37週未満の場合はpreterm PROMと呼ばれる。
    2. 視診、腟内pH測定、胎児癌性フィブロネクチンなどで診断する。
    3. 妊娠35週未満であれば、妊娠期間の延長をはかる。抗生物質の予防投与を行ない感染徴候の出現に注意する。
    4. 妊娠35週以降であれば、24時間待機し、陣痛が発来しない場合は分娩誘発する。

noteリスクサイン

リスク1:腟炎(細菌性腟症).腟分泌物増加.
リスク2:絨毛膜羊膜炎.破水感.
リスク3:臍帯脱出.

noteリスクサインへの対応

  1. 日常生活サポート
    1. 妊娠中、「尿がもれる」「おりものが多い」などの訴えを聞くことが多い。これは子宮の増大に伴い膀胱が圧迫され、失禁しやすくなるためと、胎盤由来のホルモンの増加により腟分泌物が増加するためである。
    2. しかし、こうした症状の中に前期破水が隠れている。
    3. 判断に迷えば専門医を受診する。
    4. 腟分泌物増加が腟炎(細菌性腟症)によれば、その後、絨毛膜羊膜炎、前期破水へと進展することもあるので、不安があれば専門医を受診する。

  2. 看護ポイント
    1. 妊娠35週未満の前期破水管理では、感染(とくに絨毛膜羊膜炎)と羊水過少による胎児ジストレスなど圧迫症状に注意しなければならない。
    2. 羊水流出については、その有無や量のみならず、性状(悪臭など感染徴候の有無)を確認する。また、病態に変化がなくても、経時的な胎児モニタリングを行なうことが大切である。
    3. 35週以降の高位破水で、陣痛の発来がなく、羊水流出が少量か停止している場合、誘発を行なわず経過観察をすることもある。この場合も、35週未満のものと同様、慎重に経過観察する。

note病態生理

 規則正しい陣痛が発来する前に卵膜が破綻し、羊水が子宮外に流出した場合を前期破水(premature rupture of membrane: PROM)いう。妊娠37週未満の場合はpreterm PROMと呼ばれる。絨毛膜羊膜炎など感染、あるいは炎症により卵膜が脆弱になることが主因と考えられている。羊膜脆弱化の直接の原因は膜中のコラーゲンの分解、減少による。

 また、絨毛膜羊膜炎は頸管の組織プロスタグランディン産生を亢進させ、子宮収縮をおこす。子宮収縮は子宮内圧を増加させ、子宮口の開大とともに破水をひきおこす。

note症状

 羊水流出感。卵膜の裂傷部位が子宮口付近であれば、羊水流出に引き続き陣痛がはじまる。しかし、子宮口から離れた子宮の高い場所に裂傷が生じると(高位破水)、陣痛開始までに数日から数週間を要する。破水後は、腟内の細菌が卵膜の裂傷から上昇し(上行感染)、子宮内感染をきたす可能性がある。

note診断

  1. 破水の診断
    1. 視診:子宮口から羊水の流出を視認する。
    2. 腟内pH測定:破水により腟内pHは4.5前後から7〜7.7程度のアルカリ性に変化するためアムニケーターィ、BTB試験紙が青変する。
    3. 羊水シダ状結晶:羊水をスライドグラス上で乾燥させシダ状結晶の有無を確認する。
    4. オレンジ細胞、脂肪球の証明:ナイルブルー染色、スダン染色を用いるが迅速性にかけあまり用いられない。
    5. 胎児癌性フィブロネクチン:250 ng/mlをカットオフ値とする。

  2. 超音波検査による羊水量測定

note治療・管理

 破水と診断されればいかなる時期であっても入院管理する。妊娠35週未満であれば、妊娠期間の延長をはかる。妊娠35週以降であれば、24時間待機し、陣痛が発来しない場合は分娩誘発する。

 妊娠35週未満の場合、感染対策としてペニシリン系、セフェム系の抗生物質を予防投与し、子宮収縮がある場合は子宮収縮抑制剤を使用する。ただし、母体発熱、白血球増加など感染徴候が出現するか、胎児ジストレスがある場合は帝王切開などにより急速遂娩とする。

日本医科大学多摩永山病院 女性診療科・産科医局
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